*** 鳥獣保護管理員 ***

鳥獣保護員・エトロフ小林の 『落書き帳』 第13回 「ダイジョウブ」の闇
ごきげんよう。エトロフです。

  前回、愚痴をこぼしましたように、今年もオオタカさんに忖度しまくって調査しております。最近、エトロフと同じような「忖度派」が少~し増えてきたような気がして、喜ばしい限りです。

 数年前のこと。その年、エトロフが見張っていた巣は、なんと公園の遊歩道の真上にありました。この巣は、調査を始めたころには、なかなか見つかりませんでした。すぐ近くでオオタカの声がするのに、営巣木は特定できないまま。そうこうするうちに、親鳥の甲高い声に幼鳥の頼りなげな声が加わるようになりました。
 
 ある日、幼鳥の声にふと頭を上げたら…目があってしまいました!巣が、ほんとに頭の上にあったのです。4階、いや3階のベランダから声をかけられた、という感じでした。そして、そこには白いぬいぐるみみたいなのが3羽。

 やばい!と思いました。最近の「やばい」ではなくて、本来のネガティブな「やばい」です。こんなところに巣を作るなんて、何考えてんだ? はたして無事に巣立つのだろうか?

 それからは、その遊歩道は使わずに、巣がギリギリ見えるような場所から、そ~っと様子を窺うようにしました。公園の遊歩道ですから、もちろん人通りはあります。しかし、道をゆく人の多くは、ピーピーと鳴く白いぬいぐるみが頭上にいることに気づきません。ある人はのんびりダラダラと、ある人は追い立てられるようにセカセカと、通り過ぎてゆきました。

 みんな、巣に気がついていない。こういう状況だったら、うまくいくかもしれない。 と、ちょっと安心し始めたある夕方、巣の真下にカメラを構えたおっさんがいたのです。近くで親鳥が盛んに鳴いていました。幼鳥たちに給餌に来たものの、人がいるので近づけないのだと思われました。

 現在、鳥獣保護員7年目のエトロフは、こういう状況を目にしたら、ひるむことなく注意します。でも当時はまだ青かったというのか、自分よりも明らかに年上のおっさんに注意するのに、かなり勇気が必要だったんですね。あ~、どうしよう~という感じでした。

 しかし鳴き交わし合う親子を見ている辛さが限界に達しました。おっさんの前にズズッと出て、「巣に近づきすぎてます。親が巣に来れないですよ」と申し上げたら・・・
   「ダイジョウブだよ❕」 
  唖然として言葉を失うエトロフ。おっさんはさらに「ダイジョウブだよ、ず~っと待ってれば、ちゃんと巣に来るから」  ・・・「ず~っと」って何分?何十分?


 ここで「ダイジョウブ」という言葉について考えてみたいと思います。皆さんはどういうときに「ダイジョウブ」と言いますか?

例1 飲み会帰り、千鳥足で歩いている時。「ちゃんと家に帰れる?」と言われて「あ~ダイジョウブ、ダイジョウブ。ほろ酔い、ほろ酔い♪」
例2 探鳥中にうっかり、三脚とスコープを倒してしまった時。周りの人に「壊れたんじゃない?」と聞かれ、「ダイジョウブ、大したことないよ」

・・・というように、自分自身又は自分の所有物などの状況について、自分で判断できる場合に「ダイジョウブ」を使うのではないでしょうか?

 このおっさんのケースを振り返ってみましょう。親鳥が巣に来るか否かについては自分の経験から「ず~っと待っていれば必ず戻ってくる」ので(そして自分はいい写真が撮れるので)ダイジョウブ。まあ、よしとしましょう。

 それでは「ず~っと待たされている親鳥や幼鳥は、どんな気分でいるの?ストレスを感じないの?」という点については、どうでしょう?「ダイジョウブ」と言い切れますか?

 ストレスを感じているかどうかは、その本人(本鳥?)でないと、わかりません。自然界において、人間は悪影響の可能性があることをやってはいけないのです。

 その後、3羽のぬいぐるみたちは立派なオオタカの幼鳥として無事に巣立ちました。結果として、おっさんの言うように「ダイジョウブ」だったわけです、この年は。

 翌年から、オオタカはこの公園で繁殖しなくなりました。
 
各環境管理事務所の連絡先は、以下をご参照ください。
http://wbsj-saitama.org/kankyokanri_office.html
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