*** 野鳥観察の部屋 ***
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ムナグロ Pluvialis fulva の生態と年齢識別の紹介 |
2020年7月7日
蓮田市 長嶋宏之
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はじめに
春と秋に内陸を通過するムナグロは、我々バーダーに野鳥観察の楽しみを教えてくれ、鳥の渡りに興味を持たせてくれる存在です。毎年ムナグロの時期が来て、ムナグロを見る度に、
・春は個体数が多いのに、秋の個体数が少ないのは何故なのだろうか?
・色々な羽衣の個体がいるけれども、成幼雌雄の識別はできるのだろうか?
・何歳で性成熟するのだろう?
などなど、疑問を繰り返すのだが、その疑問を解決しないまま今日になってしまった。
この度、これらの疑問に正面から立ち向かい、長年関心を持ってきたムナグロの生態に迫ってみた。
その結果
・春と秋の渡りコースに違いがあり、さらに成幼で渡りの時期に差があることが解った。
・3歳鳥(2S)までの年齢は識別できるが、それ以上は3歳鳥と同じで識別ができない。
・第1回夏羽で性成熟する(繁殖出来る)ようだ。
などが下記に示す資料から解ったので、以下に紹介する。
(1) 分類と形体
① |
分類 |
チドリ目チドリ科ムナグロ属ムナグロ |
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英名 |
Pacific Golden Plover |
学名 Pluvialis fulva |
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類似種 |
ヨーロッパムナグロ |
Pluvialis apricaria |
L 26-29cm, WS 67-76cm, WT 160-280g |
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アメリカムナグロ |
Pluvialis dominica |
L 24-28cm, WS 65-72cm, WT 122-194g |
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ダイゼン |
Pluvialis squatarola |
L 27-31cm, WS 71-83cm, WT 174-320g |
② 体型
体格 L 23-26cm, WS 60-67cm, WT100-192g
羽根の枚数と大きさ
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部 位 |
数 |
資料⑤ |
資料⑥ |
資料⑦ |
初列風切羽 |
10枚 |
130mm P9 |
122-128mm |
ー |
次列風切羽 |
11枚 |
70mm S11 |
67-73mm |
ー |
三列風切羽 |
4枚 |
86mm Te2 |
96-97mm |
103mm |
尾羽 |
12枚 |
68mm Ta1 |
65-67mm |
ー |
(注1)資料⑤と資料⑥は幼鳥。性は不明。 資料⑦は性、年齢とも不明。 |
③ |
寿命 |
10年以上生存した例が標識個体である。(資料⑮) |
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(2) 繁殖形態 |
① 番形態 |
: |
一夫一妻。 繁殖地で番を形成する。 デスプレイ・フライトは雄がチョウのように羽をバタつかせ、鳴きながら90~100m上昇する。 抱卵・育雛は雌雄で行う。 ただし、雄は雌よりも長期間に渡り雛の面倒をみる。 繁殖は1シーズン1回。 ただし、失敗した場合、時期によっては再度産卵繁殖する。 (詳しくは資料⑩参照) |
② 巣 |
: |
ツンドラの,開けて乾燥した場所に,地衣類や草本の葉を用いて造巣する。番は巣の 周囲になわばりをもち,防衛する。オスは前年のなわばりに戻ることが多い。(資料⑮) |
③ 卵 |
: |
資料⑮によると「一腹卵数は4卵。ほかの多くのチドリ科鳥類と同様に、汚白色の地に黒のまだら模様。 大きさは約48×33mm, 重量は約25g。 主にオスが昼間抱卵し、メスは夜間抱卵する。22~24日で孵化する」ようだ。 (詳しくは資料⑮参照) |
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造巣 |
5月下旬~6月上旬 |
抱卵 |
5月下旬~7月中旬 |
一腹卵数 |
4個 |
抱卵日数 |
25日 |
孵化後巣立ちまでの日数 |
26~28日 |
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ムナグロは極地で繁殖する為か、卵の写真が日本の図鑑にない。 ヨーロッパムナグロの 卵の写真をロシアの図鑑に見つけた。これによるとケリの卵(48mmX32.5mm)に
よく似るが、地色はケリの卵より、はるかに白い。 |
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(3) 繁殖地と越冬地
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資料⑪によると「西シベリアのヤマル半島から東は西アラスカまでの北極圏と亜北極圏で繁殖する。
冬季は東アフリカのソマリアの海岸部からインドの東西沿岸部および中国南部、東南アジア、 ニュージーランドやオーストラリアなどのオセアニア等で主に越冬する。 また中部太平洋の島々で
越冬するものもいる。
中には米国の西海岸、主に南カルフォルニアで越冬するものもいるが少数である」ようだ。
(詳しくは資料⑪参照)
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(4) 渡りのコース
① 解ってきた渡りのルート (詳しくは資料⑭参照) |
図1:米国の研究で解ったムナグロの渡りルート |
① サモア諸島
② フィジー諸島
③ ギルバート諸島
④ マーシャル諸島
⑤ マリアナ諸島
⑥ 日本
⑦ アラスカ
⑧ ハワイ諸島
⑨ クリスマス島
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資料⑭によると
「2009年と2010年、米国の研究者がアメリカ領サモアでデーターロガーを装着して、渡りの経路や 中継地を調べた。その結果、春の渡りは越冬地のフィジー諸島→マーシャル諸島→マリアナ諸島→
日本→繁殖地の北極圏までのルート、一方秋の渡りは極北の繁殖地からクリスマス島→サモア諸島 まで、時計まわりで移動する大きな経路があることが解った。」 図1で空色が春の渡りルート、茶色が
秋のルートを示す。これ等のメインルートとは別に、秋に日本を通過して南下し、越冬地の東南アジア まで移動する群れがいるが、春に渡る数に比べ、この秋の渡りは数が少ない。詳しくは資料⑭を参照。
資料⑮によると「Johnson et al.(2011)は,2009年と2010年にハワイのオアフ島で越冬する本種24羽 にジオロケータを装着して渡り行動を調べた.その結果,オアフ島越冬個体群は,繁殖地であるアラス
カ西部との間を直線的に往復しており,4,800~4,900kmを3~4日で移動していることがわかった。」 また、別の資料では「海洋上を渡るムナグロの翼は、大陸側の島づたいに渡るムナグロの翼よりも平均して長い」とのことだ。(資料⑩)
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② |
迷鳥
迷鳥はアフリカ東部からケープタウン南部、内陸のナクル湖とトゥルカナ湖、ヨーロッパ西部から
イギリス東部、ニューイングランドさらにガラパゴスやチリなどに迷行する。(詳しくは資料⑪参照) |
③ |
日本を通過するムナグロの個体数
資料⑮によると「日本列島に飛来する春秋の渡りのムナグロの個体数は、春に多く、秋は少ない。
環境省のモニタリングサイト1000の調査では、越冬地である南西諸島を除く各渡来地の、2014年
春期の最大渡来数合計が2,938羽、秋期が408羽であった。」 (詳しくは資料⑮参照)
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④ |
蓮田市周辺の春の渡りのムナグロの個体数
蓮田市周辺の春の渡りのムナグロの個体数を2001年~2005年に本多己秀氏が調査している。 氏の調査によると、2001年(2800羽)、2002年(2000羽)、2003年(4000羽)、2004年
(6700羽)、2005年(3500羽)が蓮田市周辺を渡って行った。 (詳しくは資料⑳参照)
シギチが減少していると言われている2020年の現在、300~500羽程度にまで減少してしまった。
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(5) 渡りの行動パターン (資料⑩、⑪、⑬、⑮ から引用) |
(6) 年齢と換羽 (以下資料⑩による) |
年齢は次のように進行する。1歳鳥・幼鳥(Juv)⇒ 1W⇒2歳鳥(1S)⇒2W⇒3歳鳥(2S)⇒3W |
① |
1歳鳥 (幼鳥)の場合 |
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(イ) |
(Juv⇒1W)幼鳥羽の換羽は北部オセアニアに到着した後の10月に始まり、越冬地で12月初旬迄に完結する。 |
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(ロ) |
(Juv⇒1W)体羽の大部分と雨覆の一部は換羽するが、幼鳥羽の初列と三列風切と尾羽は換羽せず幼鳥羽のまま残る。(部分換羽) |
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(ハ) |
(1W⇒1S)繁殖羽への換羽は越冬地で1月下旬から2月に始まり、渡り途中の5月の中旬までに完結する。 |
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(ニ) |
1歳鳥は、換羽(1W⇒1S)の様子がとても変化に富んでいる。1Sへの換羽は部分換羽で初列風切に幼鳥羽が残っているが、頭や体の羽は換羽し、三列
風切や尾羽や雨覆の大部分も換羽して、成鳥の様な羽衣になる。 その一方で繁殖羽への換羽が部分的だったり、非繁殖羽のままで換羽が進まない1歳鳥もいる。 |
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(ホ) |
1Sへの換羽が遅れた1歳鳥の中には、 越冬地に残留するものがいる。 |
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(ヘ) |
南方の越冬地では2月初旬~3月に、北オセアニア地域では4月中旬~5月上旬に繁殖地に向かって春の渡りを開始する。 |
② |
2歳鳥の場合 |
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(イ) |
(1S⇒2W)非繁殖羽への換羽は抱卵中の6月に始まり、1月に入って越冬地で完結する。 |
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(ロ) |
約半数は繁殖地を旅立つ までに非繁殖羽へ換羽がほぼ完了する。ただし、約半数の換羽は7月中に繁殖地で始まり、渡りの間も換羽を継続して、越冬地で1月に入って完結する。
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(ハ) |
秋の渡りシーズン、換羽が進行中の2歳鳥(1S)の内側初列風切羽は新羽が混じった成鳥羽で、外側初列風切羽は擦り切れた幼鳥羽なのに対し、1歳鳥(Juv)の初列風切は全て幼鳥羽なので、両者の見分けは容易である。 |
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(ニ) |
3歳鳥(2S)になるまで完全な繁殖羽を獲得できないものもいるのだが、大半は2歳鳥(1S)でほぼ完全な繁殖羽を獲得する。 |
③ |
成鳥 |
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(イ) |
成鳥羽は2歳鳥(1S)でほぼ獲得する。 |
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(ロ) |
3歳鳥(2S)の羽衣は換羽終了後の2歳鳥(1S)の羽衣と野外で見分けられないこともある。
(2W≒3W=4W、5W・・・) (1S≒2S=3S、4S・・・) |
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(7) 識別 (以下資料②④⑤⑥⑧⑩による) |
① |
幼鳥 Juv |
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(イ) |
観察できる時期: |
秋の渡りで 7月中旬~10月初旬、(関東地方を通過するピーク:8月~9月上旬) |
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(ロ) |
雌雄: 識別できないようだ。 |
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(ハ) |
羽衣の特徴: |
・ |
背面の羽毛は、大部分が黒色で、羽縁に半円状の淡色斑がある。 |
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・ |
冬羽に似るが上面に斑紋が多く、全体に黄褐色みが強い。特に背や翼の黄色味が顕著。 |
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・ |
眉班の黄色味がやや強く、胸の黒い縦斑が冬羽よりもはっきりしている。 |
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・ |
前頸と胸には縦斑が著しく、全身に黄金色が顕著である。 |
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・ |
10月になると一部に黄色味を全く欠いた白っぽい個体も見られる。元々の黄色味が次第に退色して白っぽくなるものと思われる。 |
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・ |
羽衣に黄色味と白っぽくなった羽が混じっている、中間的な個体も観察される。 |
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(ニ) |
羽毛の特徴: |
・ |
三列風切や雨覆、尾羽などの羽縁に見られる斑点模様が、本種の大きな特徴である。 |
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・ |
幼鳥羽では、この斑点模様の黄色味が成鳥羽より強い。 |
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・ |
幼羽の尾羽に横縞はない。(成鳥尾羽には、外側のものにはっきりした横縞がある) |
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図2: 幼羽の背面の模式図が参考になる。(資料⑧参照) |
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図3: 幼羽の大雨覆が参考になる。(資料⑤参照) |
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図4: 幼羽の尾羽が参考になる。(資料⑤参照) |
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図5: 幼羽の三列風切が参考になる。(資料⑤参照)
・幼羽の三列風切にも、横縞がない。
・図5の羽縁は黄褐色がはっきりしているので新羽と思われる。 |
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(ホ) |
写真: |
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写真1:Juv 16年9月
伊佐沼 松原様 |
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写真2 :Juv⇒1W 19年1月
戸田市 新田様 |
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② |
第1回冬羽 1W |
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(イ) |
観察できる時期: |
越冬地又は越冬個体。10月中旬~1月下旬 (関東地方では越冬個体) |
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(ロ) |
雌雄 : |
識別できないようだ。 |
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(ハ) |
羽衣の特徴: |
・ |
体羽の大部分と雨覆の一部は換羽するが、初列風切と三列風切と尾羽は換羽せず 幼鳥羽が残っている(部分換羽)。 |
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・ |
幼羽の特徴であった前頸と胸の縦斑は無い。 |
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・ |
肩羽上列まで第1回冬羽に換羽しているが、肩羽下列や雨覆は幼羽のままの個体 も見られる。 |
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・ |
全体がほぼ黒色で羽縁が線状に白または褐色で、切れ込みが認められる場合が 多い。 |
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(ニ) |
羽毛の特徴: |
・ |
全体がほぼ黒色で羽縁が線状に白または褐色で、切れ込みが認められる場合が多い。 |
図6: 第1回冬羽の背面の模式図が参考になる。 (資料⑧参照) |
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(ホ) |
写真: |
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写真3:Juv⇒1W 18年10月
取手市 塚本様 |
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写真4:Juv⇒1W 08年10月
父島 長嶋 |
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写真5 : 1W 17年1月 宮古島 関口 |
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③ |
第1回夏羽 1S |
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(イ) |
観察できる時期: |
春の渡りと秋の渡り |
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(ロ) |
雌雄 : |
識別できる個体とできない個体が混在する。 |
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(ハ) |
羽衣の特徴: |
1歳鳥の換羽(1W⇒1S)の様子はとても変化に富んでいる。多くは頭や体の羽が換羽し、 三列風切や尾羽や雨覆の一部が換羽して、ほぼ成鳥の様な羽衣になる。(ただし、初列風切羽には摩耗してボロボロの旧羽(幼鳥羽)が残っている。)
その一方で繁殖羽への換羽が部分的なままだったり、1Wの非繁殖羽のままで換羽の進行が遅れている個体もいる。 |
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(ニ) |
羽毛の特徴: |
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資料⑥に、”ここに描いたのは、沖縄県平良市の宮古島で事故死した、若鳥と思われる個体からのものである。” とのことから、筆者は1Sと推定した。 |
図7: 大雨覆羽 (資料⑥参照)
・外弁内弁ともに淡褐色で白い縁どりがあるもの、白斑があるものなど両方がある。
図8: 背部羽毛 (資料⑥参照)
・羽縁が黄褐色なので新羽のようである。
図9: 尾羽 (資料⑤、資料⑥参照)
・成鳥の尾羽には横縞があり、外側のものほど、はっきりしている。
図10: 三列風切 (資料⑥参照)
・横縞が現れている。 |
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(ホ) |
写真: |
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写真6:1W⇒1S 12年4月
取手市 塚本様 |
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写真7 :1W⇒1S 16年5月
白岡市 長嶋 |
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④ |
第2回冬羽 2W |
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(イ) |
観察できる時期:秋の渡りから越冬期 |
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(ロ) |
雌雄:識別はできないようだ。 |
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(ハ) |
羽衣の特徴: |
・頬の濃い褐色の斑が目立つ |
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・眉斑が白く目立つ |
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・尾羽端に届きそうに、三列風切が長い |
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(ニ) |
羽衣の特徴: |
・2Wへの換羽は完全換羽で、初列風切羽は全て成鳥羽となる。
ただし1S→2Wへ換羽中の個体は内側初列風切羽が新羽で、
外側初列風切羽が旧羽(幼羽)で擦り切れている。 |
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(ホ) |
写真: |
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写真8:1S⇒2W 08年10月
父島 長嶋 |
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写真9 : 2W 17年2月
吉見町 長嶋 |
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写真10 :2W⇒2S 20年5月
取手市 塚本様 |
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⑤ |
第2回夏羽 2S |
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(イ) |
換羽期間: |
(1W⇒1Sと同様)春の繁殖羽への換羽は越冬地で1月下旬から2月に始まり、渡り途中の5月の中旬までに完結する。一方、秋の換羽2S⇒3Wは繁殖地で6月中旬に始まリ、渡りの期間中も換羽を継続して、越冬地で1月に完結する。
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(ロ) |
雌雄: |
・ |
雄夏羽は頭から腹まで黒く、額から黒色部に沿って白色帯が続いている。脇から下尾 筒には黒色黄斑がある。頭頂から上面は黄色、黄褐色、淡色、黒色などのまだら模様。翼下面は灰褐色で、脇羽は淡褐色。嘴は黒く、足は灰黒色。 |
・ |
雌は黒色部が褐色みを帯び、まだら。(資料②) |
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(ハ) |
羽衣の特徴: |
・ |
換羽が遅れている個体でも、2Sで完全な成鳥羽となる。
ただし、初列風切羽には旧羽(2Wの成鳥羽)が残る。 |
・ |
Ad♂BREEDING::腹部は黒色で下尾筒に白斑がある。側面に連続した白い脇腹線がある。
♂は♀よりも幾分黒っぽく、白いまだら模様が少ない。 |
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(ニ) |
羽毛の特徴: |
・ |
成鳥羽の場合、大雨覆は内側の何枚かを除いて、斑点はほとんどでない。 |
・ |
成鳥羽の場合、尾羽には横縞があり、外側のものほど、はっきりしている。 |
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(ホ) |
写真: |
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写真11:2Sと思われる 20年5月
取手市 塚本様
・尾羽に横縞が認められる。 |
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写真12:2Sと思われる 20年5月
取手市 塚本様
・翼下面が灰褐色、脇羽が淡褐色なのが分かる。 |
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写真13:♀2S⇒3Wと思われる 12年8月
取手市 塚本様 |
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写真14 :♂ 2S⇒3Wと思われる 17年9月
取手市 塚本様 |
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⑥ |
第3回冬羽 3W |
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(イ) |
換羽期間: |
2Wと同様と思われる。 |
|
(ロ) |
雌雄: |
識別できないようだ。 |
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(ハ) |
羽衣の特徴: |
検討中だが、2Wと見分けられないのではなかろうか。 |
|
(ニ) |
羽毛の特徴: |
検討中だが、2Wと見分けられないのではなかろうか。
図11:成鳥冬羽の背面の模式図が参考になる。(資料8参照)
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(ホ) |
写真: |
検討中 |
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⑦ |
第3回夏羽 3S |
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(イ) |
換羽期間: |
2Sと同様と思われる。 |
|
(ロ) |
雌雄: |
2Sと同様と思われる。 |
|
(ハ) |
羽衣の特徴: |
2Sと見分けられない。 |
|
(ニ) |
羽毛の特徴: |
2Sと見分けられない。 |
|
|
(ホ) |
写真: |
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写真15 :3Sと思われる 17年4月
ハワイ 関口様 |
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(8) まとめ |
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ムナグロの生態について、多くのことが解った。その一方で新たな疑問が生じ、次の課題となった。 |
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① |
ムナグロの渡りは太平洋を時計回りに渡る主コースの他、日本上空を南下して東南アジアの越冬地に向かうコースや西アラスカ等の繁殖地とハワイ諸島等を往復するコースなど複雑な渡りがある。
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② |
春の渡りの主コースと秋の渡りの逆回りのコースでは、その渡りの数に差があった。 |
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③ |
繁殖地を旅立つ順は、先ず繁殖に失敗した個体、雌成鳥,雄成鳥、孵化した幼鳥の順のようだ。 |
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④ |
羽衣に依る性の識別は、夏羽では可能だが、冬羽では新たな課題となった。 |
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⑤ |
羽衣による年齢の識別は2Sまでは可能だが、それ以上は新たな課題となった。 |
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⑥ |
1W⇒1Sの換羽が遅れた個体の中には、越冬地に残る個体が少なからずいることが解った。 |
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⑦ |
性成熟年齢(卵を産める歳)に達するのは1Sと言うことが解った。ただし、2Sまでは個々の羽が成鳥羽に変化するようだ。 |
|
⑧ |
1W⇒1Sの換羽は進捗の早さ、換羽の程度などに個体差が大きくあり、多様なようだ。 |
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⑨ |
3Sの羽衣は2Sと見分けがつかないとの事。何処か違いはないのだろうか? |
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⓾ |
冬羽の雌雄の識別はできないのだろうか? |
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(9) 謝意 |
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資料⑭、⑮、⑲は貴重な情報を教えてくれました。また資料⑯、⑰、⑱、⑳はとても参考になりました。著者の方々に感謝申し上げます。
また、本稿を纏めるに当り、貴重な写真を快く提供して下さいました 関口明宏様、塚本英夫様、松原卓雄様、新田和美様に厚く御礼申し上げます。
ムナグロの生態と年齢識別を紹介いたしましたが、解らないことが多々あり、まだまだ勉強中です。お気づきの事がありましたら、ご指導下さいますよう、お願い致します。 |
|
(10) 引用した資料と文献 |
資料№ |
名 称 等 |
頁 |
① |
フィールドガイド日本の野鳥 増補改訂新版 高野伸二著 日本野鳥の会 2015年 |
134 |
② |
日本の野鳥650 写真:真木広造、解説:大西敏一、五百澤日丸、平凡社 2014年 |
224 |
③ |
鳥くんの比べて識別! 野鳥図鑑670 第3版 永井真人・著 茂田良光・監修 文一総合出版 |
280 |
④ |
日本の鳥550 水辺の鳥 増補改訂版 桐原政志/解説 山形則男・吉野俊幸/写真 文一総合出版 |
196 |
⑤ |
原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版 叶内拓哉・高田 勝 文一総合出版 2018年 |
136 |
⑥ |
改訂新版日本の野鳥 羽根図鑑 笹川昭雄 世界文化社 2001年 |
145 |
⑦ |
色と形で判る実物大識別図鑑 野鳥の羽根 笹川昭雄著 世界文化社 1996年 |
167 |
⑧ |
ムナグロ冬羽型における諸タイプについて 渡辺朝一 鳥類標識誌 13(2):59-65.1998 |
|
⑨ |
NATIONAL GEOGRAPHIC Field Guide to the Birds of North America 4th EDITION |
152 |
⑩ |
The Shorebird Guide. MICHAEL O'BRIEN 2006年 |
40, 325 |
⑪ |
SHOREBIRDS AN IDENTIFICATION GUIDE. PETER HAYMAN 1986年 |
100, 278 |
⑫ |
PHILLIPPS' FIELD GUIDE TO THE BIRDS OF BORNEO 2011年 |
112 |
⑬ |
Field Guide to Australian Birds. Second Edition MICHAEL MORCOMBE |
132 |
|
|
以上
|