*** 野鳥観察の部屋 ***

 アイリング と 眼瞼輪
2020年4月
蓮田市 長嶋宏之

1.アイリングという言葉との出会い
鳥を見始めた頃、先輩から鳥の部位を示す言葉に「アイリング」という言葉を教えてもらった。しかし、この「アイリング」という言葉の意味が分からず、長い間、気になっていた。英語の様な雰囲気・語感があるので、当時、英語の辞書で調べたりもした。しかし、手元の辞書には載っていなかった事を覚えている。最近になって調べたことだが、日本鳥学会用語委員会編による『鳥類学用語集』にも載っていない事が分かった。(近頃は“和製英語かもしれない”と思うようになった。)

このような背景の中で、フィールドで使われている「アイリング」という言葉の使い方に曖昧さを感じることがしばしばあった。今回、「アイリング」について、手元の図鑑での記述がどうなっているのかを調べてみたので、以下に紹介する。

2.図鑑による表現の違い
  • (1) 『フィールドガイド日本の野鳥』(以下、FGと記す)
    私達、日本野鳥の会埼玉の会員は『日本鳥類目録改訂第7版』(以下、第7版と記す)に準じ、 FGを座右の書として、日々の活動を行っている。
    しかし、このFGには「アイリング」という言葉が見当らない。例えばコチドリの項では「眼の外縁」となっている。メジロ、サンコウチョウ、ツミなども全て「眼の外縁」となっている。さらに調べるとFGでは全ての鳥に対し説明が必要な場合、「眼の外縁」で統一している。
    著者は色々考えた末に「眼の外縁」という表現を選択したのではないだろうか。

  • (2) 『日本の野鳥』 山と渓谷社(以下、叶内図鑑と記す)
    第7版に沿って、FGの補足拡充版ともみえる叶内図鑑での表現を同じコチドリで調べると「アイリング」となっている。メジロ、サンコウチョウ、ツミなども全て「アイリング」となっている。この図鑑では全ての鳥に対し説明が必要な場合、「アイリング」で統一している。

    「眼の外縁」と「アイリング」とは同じ意味、同じ部位を示しているのだろうか?疑問が湧く。

  • (3) 『日本の野鳥650』 平凡社(以下、大西図鑑)
    第7版にこだわらず、世界の鳥類学者の学説の趨勢に沿って編集したとみえる大西図鑑ではメジロ、コチドリは「アイリング」と記されている。一方、サンコウチョウ、ツミは「眼瞼輪」となっている。大西図鑑では「アイリング」と「眼瞼輪」をその言葉の定義に従って使い分けているようだ。
3.言葉の定義
(1)ブログ「野鳥の用語集です。アイリングとは?」によると次のように定義しており、分かりやすいので紹介する。
 http://www.yachou.org/words/a/airingu.html
 ・アイリングとは・・・眼をリング状(環状)に囲む羽(囲眼羽)のこと。
(2)「眼瞼」について、広辞苑第6版では次のように記述している。
 ・眼瞼とは・・・・眼球の上下をおおい、角膜を保護する皮膚のひだ。まぶた。
 ・眼瞼輪とは・・・その眼瞼が繋がるように一つの輪のようにみえることに由来する。
  (眼科医院の掲示を見ると、人間にも「眼瞼」と呼ばれる部位があるのが分かる)

4.図鑑による記述の違い
  FG、叶内図鑑、大西図鑑から、それぞれの記述を拾ってみた。

 種  名 FG 叶内図鑑 大西図鑑
メジロ 眼の外縁 アイリング アイリング
コチドリ 眼の外縁 アイリング アイリング
サンコウチョウ 眼の外縁 アイリング 眼瞼輪
アカコッコ ― アイリング 眼瞼輪
キンバト ― ― 眼瞼輪
カッコウ ― アイリング 眼瞼輪
ツミ 眼の外縁 アイリング 眼瞼輪
ウズラシギ ― アイリング アイリング
イソシギ ― アイリング アイリング
ノジコ 眼の外縁 アイリング状 アイリング
カワガラス まぶた 瞼(まぶた) 瞼(まぶた)
5.まとめ
 我々野鳥の会の会員はFGを座右の書とし、これに基づいて日々の活動を行うことを旨としている。であればFGで使われている「眼の外縁」という言葉を使うのが妥当であろう。
しかしながら、現状は「アイリング」と言う言葉が広く使われている。私は「アイリングという言葉を使うな」とまでは言わない。しかし、「アイリング」という言葉を使う時、対象物は「羽」なのか「皮膚」なのかを考えながら使って欲しいと思っている。

6.追記
(1)大西図鑑で、記述を抜粋してみた。
№ 種名 アイリング 眼瞼輪 № 種名 アイリング 眼瞼輪
1 メジロ ○ 16 コサメビタキ ○
2 サンコウチョウ ○ 17 サメビタキ ○
3 コチドリ ○ 18 エゾビタキ ○
4 イカルチドリ ○ 19 クロツグミ ○
5 キジバト ○ 20 アカハラ ○
6 カッコウ ○ 21 カラアカハラ ○
7 ツツドリ ○ 22 シロハラ ○
8 ホトトギス ○ 23 アカコッコ ○
9 クロウタドリ ○ 24 チョウゲンボウ ○
10 ルリビタキ ○ 25 コチョウゲンボウ ○
11 アカアシシギ ○ 26 ワキスジハヤブサ ○
12 エリマキシギ ○ 27 チゴハヤブサ ○
13 ツバメチドリ ○ 28 ツミ ○
14 クロアジサシ ○ 29 ハヤブサ ○
15 ツルシギ ○ 30 ガビチョウ ○
 
(2)ネットで検索すると
  ①「まぶた」より引用
   http://akaitori.tobiiro.jp/simpleVC_20101029204953.html
  (イ)眼瞼輪の色
     ツミ(黄)、ハヤブサ(黄)、アカアシチョウゲンボウ(橙)、カリガネ(黄)、
     ケリ(黄)、コチドリ(黄)、ドバト(白)、キジバト(赤)、アオバト(青)、
     ホトトギス(黄)、アカコッコ(黄)、シロハラ(黄)、エナガ(黄)、エナガ幼
     鳥(赤)、サンコウチョウ(青)
  (ロ)アイリングの色
     センダイムシクイ(白)、コサメビタキ(白)、メジロ(白)、メグロ(白)、
     ノジコ(白)、アデリーペンギン(白)
   ・メジロのアイリングが白くなるのは、巣立ち後10日ほど経ってから。
   ・コサメビタキの白いアイリングは羽だが、その内側にある皮膚の黒い眼瞼輪に
    より眼が大きく見える。
   ・タマシギの眼瞼輪は黒く、その周りが白いので眼が大きく見える
   以上、引用終り。

  ②「野鳥の素顔 <野鳥と日々の出来事>  アオバトの眼」 より引用
   https://waoblog.exblog.jp/25914269/
   「アオバト」の眼がこんなになっているとは気が付かなかった。真ん中の瞳孔は普通だが、
   その外回りの虹彩が、内側は青で外側は赤の2色になっているのに驚いた、綺麗だ。
   その外回りに黒い眼瞼輪があり一番外回りはひだ状でコバルトブルーのアイリングが有る。
   これは自分にとっての新しい発見で有った。
   以上、引用終り。

(3)余談
   ヨーロッパ、アメリカ、アジアを代表する、外国の図鑑の記述を調べてみた。
   外国の図鑑の記述の例
日本語 英 語 備考
アイリング eye-ring BIRDS OF EAST ASIAのみ使用
瞼(まぶた) eyelid
眼瞼輪 eyelid circle
囲眼輪 orbital ring COLやSIBLEYで使用
・BIRDS OF EAST ASIA MARK BRAZIL著 2009年
 メジロ、コチドリにeye-ringを使用。カワガラスにはmembrane 被膜。
・COLLINS BIRD GUIDE SECOND EDITION
 カッコウ、ミヤコドリにorbital ring。コチドリにyellow orbital ringを使用。
・The SIBLEY Guide to Birds
 ハジロコチドリにblackish orbital ringを使用。
 
「日本の野鳥590 平凡社 鳥の各部の名称」より抜粋
以上
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