*** 野鳥観察の部屋 ***

 ツバメのねぐら入り観察
2019-07-31
さいたま市 大井智弘

1 ツバメ【燕】 スズメ目ツバメ科ツバメ属 Hirundo rustica/Barn Swallow 
  • 全長:17cm
  • 特徴:額と喉が赤く、胸に黒い帯がある。腹は白く、尾羽が長い
  • ヨシ原で眠る:夏の間、繁殖を終えた成鳥や巣立ちした若鳥は、ヨシ原などで集団になって眠る習性がある。時には10万羽を超えることもある。秋には東南アジアへ旅立つ。
    (写真は八ヶ岳サービスエリアで撮影)
2 2019年度改訂版「ツバメのねぐらマップ」
 日本野鳥の会では、2019年度改訂版「ツバメのねぐらマップ」(B2判/裏表カラー、8つ折り)を発行した。2015年版のものでは全国18か所のねぐらの場所やピークの時期、見どころ等が載っていたが、改訂版では32か所に増え、今回も埼玉県内からはさいたま市芝川第一調節池が紹介されている。また冊子には、ツバメの1年を通した生活や、ツバメのねぐらについての解説も書かれていて貴重な資料となっている。(上の図は日本野鳥の会HPから転載)
詳しくは下記サイトを参照。

https://www.wbsj.org/activity/spread-and-education/supervisor-and-lending/swallow-roost-map/
3 さいたま市・芝川第一調節池
 芝川第一調節池は、埼玉県東部を流れる芝川の洪水対策として見沼田んぼの南端につくられた。四季を通じて野鳥観察を楽しむことができ、定例のさいたま市民家園周辺探鳥会では、冬場を中心に一周約3キロのコースを歩いている。カモ類、猛禽類はもちろん、12月中旬以降に毎年オオハクチョウ、コハクチョウが数羽飛来し越冬する。また、2019年2月の探鳥会では53種が確認された。
 2019年度改訂版「ツバメのねぐらマップ」では、芝川第一調節池を次のように紹介している。
      
ねぐら入りのピーク時期:7月下旬ごろ   羽数:約3,000羽
約3,000羽というとすごい数と感じられるかもしれないが、近場の渡良瀬遊水地では約30,000~100,000羽とあるので、マップに掲載された32か所の中では小規模な場所のひとつである。
4 2019年7月下旬の観察結果
◎ 第1日目:7月20日(土)18:43~19:05 
続々と目の前のヨシ原と調節池の中の島にツバメが入ってくる。ピークの19時過ぎには私の頭のすぐそばを通過していく。これが3,000羽かと感激であった。

◎ 第2日目:7月21日(日)18:50~19:10
昨日と同様に目の前のヨシ原に集中的に入ってきた。しかし、調節池の島にはツバメの姿はあまり見られない。調節池の東側ではスズメの大きな群れがねぐら入りしていた。スズメの鳴き声がすごい。

◎ 第3日目:7月22日(月)17:47~18:15
梅雨空で暗くなるのが早いためかツバメの集合時刻が早い。小雨が降り出して傘を差しての観察。ヨシ原にねぐら入りしてくるツバメの数は少なく空振りに終わる。

◎ 第4日目:7月23日(火)18:45~19:10 
連日の梅雨空が夕方にかけて晴れてきた。ツバメの数は少ないが、夕焼け空をバックに飛翔するツバメの群れの姿が素晴らしかった。

◎ 第5日目:7月25日(木)18:40~19:05
 一日空けての観察であったが、ねぐら入りするツバメは少なく蚊に刺されてばかり。ヒグラシが鳴いていた。

7月下旬に連日通ってみたが、安定して毎日ねぐら入りを観察できるかというとなかなか難しいという結果であった。しかし、目の前のヨシ原にビュンビュンと入ってくるツバメのねぐら入りは圧巻であった。
5 第一調節池での観察の注意点、その他
  1. 近くに駐車場はありません(探鳥会で利用できる民家園の駐車場は夕方から使用不可)。コンビニエンスストア、トイレもありません。帰り道での懐中電灯は必需品。
  2. ツバメのねぐら入り地点は、少し明るい時間に来て歩いてみるとツバメがたくさん飛んでいる場所と飛んでいない場所がわかる。もちろん早くから飛んでいる付近が狙い目である。
  3. 夏季の第一調節池周辺で見られる野鳥は少ないが、今回の調査期間中ではコアジサシ、クロハラアジサシが合計で10羽以上見られた日があった。
  4. この時刻にサギ類も続々帰還してくる。昨年の8月は軽く100羽を超えていた。
6 終わりに
 手元の過去の記録を見ると、2017年の9月初め、ツバメの群れで空が黒くなるほど集結した日があったが、その翌日はさっぱりであった。2018年8月4日には水面を多数のツバメが行き交うとメモにある。また、8月22日は大きな群れのねぐら入りを観察できた。
 芝川第一調節池ではツバメのねぐら入りを毎日安定して観察することはできないが、まだまだ8月も夏の風物詩として楽しむことができると思われる。是非、少し涼しい夕暮れにでも空振り覚悟で芝川第一調節池のツバメのねぐら入りに足を運んでみてください。2020年の7月下旬は東京オリンピックで騒々しい時期となっているでしょうが、ねらいを定めて観察会を開けたらと個人的に思っている。

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