** 野鳥の鳴き声を楽しもう No59 【武甲山:6月の鳥たち】 **
報告: 大井 智弘

はじめに   
 梅雨入り前の6月7日(土)、埼玉県秩父郡横瀬町・秩父市の武甲山を起点に低山(小持山・大持山)を縦走してきた。この日は30度近くまで気温が上昇、大汗をかきながらの山歩きであった。
 「武甲山(標高1,304m)」というと山頂部の北側が石灰岩採掘のために山肌が削られて植物が一切ないと思われがちだがそんなことはない。右の写真のように東側から見れば緑豊かな山である。山頂には「武甲山御嶽神社」があり、古くから山岳信仰の対象とされてきた。日本二百名山にも選ばれていて多くの登山者に親しまれている。
 今回は、武甲山付近で録音した鳥たちの初夏のさえずりをお聞きください。

(東側から見た武甲山)
 1 ミソサザイ(鷦鷯)スズメ目ミソサザイ科ミソサザイ属 大きさ:11cm
 武甲山の麓にある「武甲山御嶽神社一の鳥居」駐車場から生川の沢沿いを歩きだす。さっそくミソサザイのさえずりが聞こえてきた。後ろから登ってくるハイカーの足音と熊鈴の音を気にしながら録音を開始。山では当たり前の「こんにちは~」の声も録音機がひろってしまう、もっと早朝にスタートすればと後悔するのはいつものこと。ミソサザイは小さな体でも鳴き声は大きい、渓流近くの個体ほど大きな声でさえずるらしい。
  【録音①】 ミソサザイ  58秒
 2 キクイタダキ(菊戴)スズメ目キクイタダキ科キクイタダキ属 大きさ:10cm
 日本最小の鳥であるキクイタダキは針葉樹林帯でよく見られる。この日はすばやく枝から枝へと動く姿を何とか確認できたが、さえずりが聞こえてこなかったら気づくことはできなかったと思われる。
 さえずりを文字で表すのは難しく、『日本の野鳥 さえずり・地鳴き図鑑』(メイツ出版)植田睦之(監修)によると「細い声でツピチツピチと次第に早く高く続けて、チリリーリーと下がる声で鳴く」とある。
  【録音②】 キクイタダキ  16秒
 3 ソウシチョウ(相思鳥)スズメ目ソウシチョウ科ソウシチョウ属 大きさ:15cm
 「野鳥の鳴き声を楽しもう」No58で紹介したソウシチョウ、大きさは15センチ、スズメ大のカラフルな外来種。鳴き声はガビチョウに似ているが、ソウシチョウの鳴き声は小鳥らしい細い声のような感じがする。山歩きをしていて、最近ソウシチョウと出会う機会が増えたと思っていたが、『全国鳥類越冬分布調査報告書2016-2022』でも分布拡大が顕著だった鳥の一種に数えられている。
  【録音③】 ソウシチョウ  34秒
 4 イカル(桑?)スズメ目アトリ科イカル族 大きさ:23cm
 太くて黄色い嘴をもつイカル、ちょっといかついイメージはあるが、山を歩いていて響き渡るさえずりを聞くとひとときの安らぎと喜びを感じるのは私だけではないはず。今回もきつい峠越えの道を歩いている時に澄んだ声で「キキ キコーキー キキ キーコーキー」と鳴いてくれた。ふと足を止めて聞き入り、一息つく機会を与えてくれた。
  【録音④】 イカル  14秒
 5 トラツグミ(虎鶫)スズメ目アトリ科トラツグミ属 大きさ:30cm
 トラツグミは繁殖期には夜間に「ヒョー」「ヒー」と口笛のような不気味な声でさえずるため平安時代には妖怪「ぬえ」と恐れられたという。今回のように真っ昼間に聞けるのは珍しい。「おまえ、こんな山の中まで大汗をかいてよく来たな」とご褒美に鳴いてくれたのかもしれないと勝手に思った(笑)。
  【録音⑤】 トラツグミ  28秒
 ◎ 2025年6月7日(土)(午前8時スタート 13時30分ゴール)
   「武甲山・小持山・大持山」縦走コースで観察(ほとんどが鳴き声)できた鳥たち
1 セグロセキレイ、2 キセキレイ、3 ホオジロ、4 ハシブトガラス、5 ヒヨドリ、6 ヤマガラ、7 ヒガラ、8 コガラ、9 シジュウカラ、10 コゲラ、11 エナガ、12 アオゲラ、13 アカゲラ、14 ホトトギス、15 ジュウイチ、16 ツツドリ、17 ミソサザイ、18 キクイタダキ、19 オオルリ、20 キビタキ、21 トラツグミ、22 クロツグミ、23 イカル、24 ウグイス、25 メジロ、26 キジバト 27 コジュケイ、28 ソウシチョウ (合計28種)

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