*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No37 【鳴き声識別】 ***
報告: 大井 智弘

はじめに
 9月初旬、お世話になっている研究者の方から、「モズの高鳴きを録音して提供してくれないか?」とのメールが届いた。理由はAI(Artificial Intelligence人工知能)を使って音声認識をするためで、AIに学習させるデータが必要なのだ。そんな訳で今回は「モズの高鳴き」に注目してみた。
1 野鳥たちの初鳴き、初認とAI(人工知能)
【写真①】ウグイス 【写真②】モズ 【写真③】ジョウビタキ
 春が近づく1月、2月になるとヒバリ、ウグイスの初鳴きが気になり出す。3月にはツバメの初認、4月にはオオヨシキリの声、8月の末から9月はコガモの初認、モズの高鳴き、そしてもう間もなく10月下旬にはジョウビタキの初認などバードウォッチングの楽しみは季節の移り変わりと深い関係にある。
 こうした調査をAI(画像認識や音声認識といった技術「特化型人工知能」)を用いて取り組もうという計画が進行中だ。定点観測地点を設定し、ICレコーダをセットして記録しておけば、いつモズが高鳴きを始めた(鳴き声からジョウビタキの渡来した)のかを人がいない場所や時間でも調べることができるわけだ。将棋の世界でもAIが席巻しているように、野鳥の世界でもAIの活用は始まりつつある。
2 AI活用による音声認識のためのモズの高鳴き
 モズの鳴き声を録音するのは意外と難しい。9月、10月、何気なく探鳥しながら歩いている時はどこでも鳴いているようなのだが、近くで録音したいと思うと見透かしているかのように抜き打ちみたいに鳴いて、こちらが録音態勢に入ると黙ることが多い。
 『鳴き声から調べる野鳥図鑑』松田道生(著)文一総合出版によると、「甲高い「キィー、キィー」、はげしい「ギチギチギチ・・・」、にごった「ジュンジュン・・・」と鳴き続ける。これをモズの“高鳴き”という。高鳴きは雌も行う」とある。

【写真④】2021年1月 戸田市
 また、拙稿「野鳥の鳴き声を楽しもうNo12(モズ)」も参照願いたい。
 AI(人工知能)恐るべしといってもまずはその学習機能を育てなければならい。現段階ではまずは我々が教師となってデータを注入することが必要である。これまで集めたデータとなるモズの高鳴きを比較しながら楽しんでいただきたい。 
 【録音①】2021年10月 川口市  31秒
  木のてっぺんで「威嚇」または「警戒」するような「ギチギチギチ・・・」鳴き
 【録音②】2021年10月 さいたま市  9秒
  高鳴きしながら飛んでいった、喧嘩を売っていたのかも(笑)。
 【録音③】2019年9月 さいたま市  50秒
  2羽でいがみ合うような声を出していた

【写真⑤】2021年1月 戸田市
 【録音④】2019年10月 北本市  19秒
  切れ味鋭い格好いい高鳴きを聞くことができた
 【録音⑤】2020年10月 さいたま市  62秒
  ぐぜり鳴きからキュンキュン鳴きへと続く
 【録音⑥】2021年10月 さいたま市  40秒
  エナガの群れの声を録音していた時に急にモズが高鳴きをしてきた
  エナガは恐れることなく落葉した桜の木で「ジュル、ジュル」声を連発(笑)
 【動画】2021年4月 さいたま市 52秒
  モズが尾羽を回す様子、別個体の鳴き声も聞こえてくる

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