*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No35 【ホオジロ類の囀り】 ***
報告: 大井 智弘

はじめに
 鳥仲間のSさん(日本野鳥の会埼玉)からこの夏に撮影したコジュリンの動画が届いた。しかもさえずりがバッチリ入っていた。そこで今回はこの動画をきっかけにホオジロ類(コジュリン、ホオアカ、アオジ、ホオジロ)のさえずりを比較してみたい。
 1 コジュリン(小寿林)スズメ目ホオジロ科ホオジロ属 全長:14~15cm
【動画①】ヨシのてっぺんでさえずるコジュリン 23秒
 いい感じですねぇ、風が吹いてヨシが揺れていてもまったく気にすることなくさえずっているコジュリン。黒頭巾をかぶったような夏羽、かつて「鍋かぶり」と呼ばれていた訳がよくわかる。『フィールドガイド日本の野鳥』高野伸二(著)によると、コジュリンは青森県、秋田県、茨城県、千葉県などの低地の湿原で局地的に繁殖するとあるので埼玉県ではなかなか見られない訳ですね。
◎鳴き声
【録音①】動画から声だけを引っ張り出して若干音量を上げてみた  16秒
 「ピッ、チッチ、ピッチョチョビッ」など、一緒にオオセッカ、セッカの声も聞こえる
 ホオジロのさえずりと似ているが短めでやや金属的な印象がある
 2 ホオアカ(頬赤)スズメ目ホオジロ科ホオジロ属 全長:16cm
 ホオアカといえば頬(耳)の栗色、灰色の頭部が識別ポイント。繁殖地は標高のある高原や草原だが、草原といっても灌木が混じる乾いた場所を好むようだ。
 繁殖期は枯木や枯れ草、または人工物の上をソングポストにして盛んにさえずるので見つけやすい。
 越冬期には平地のヨシ原や農耕地に生息するが地上付近にいることが多く発見しづらい。地鳴きはホオジロ類共通の「チッ」「ピィ」と小声で鳴く

【写真①】2019年7月 長野県諏訪市
【録音②】2019年7月 長野県諏訪市 さえずり  16秒
 「チョッ、チッ、チュチュチュルリリ」などと繰り返して鳴く
 ホオジロより短くやや濁った感じに聞こえる
 3 アオジ(青鵐)スズメ目ホオジロ科ホオジロ属 全長:16cm
 越冬期のアオジは、林床や草地などの地面近くで「ヅィ」や「チィ」という小声で地鳴きをするので姿が見えなくてもその存在を知ることができるバーダーも多いであろう。しかし、繁殖地では目立つ所でリズミカルなさえずりを聞かせてくれる。「さえずり飛翔」もするというので我々が知る地味な印象とは違う。
【写真②】2021年2月 北本市 オス 【写真③】2021年1月 さいたま市 メス
◎鳴き声
 ここでは春に繁殖地へ移動する直前の「ぐぜり鳴き」というか「さえずりの練習」のような声と、夏真っ盛りに涼しい高原でのさえずるアオジの声を紹介したい。
【録音③】2021年4月 さいたま市  23秒
 繁殖地へ移動する直前の声

【録音④】2021年7月 栃木県矢板市  33秒
 「チョ チーチョーツルル」などとさえずる
 ホオジロの鳴き声よりも音程が高く、節回しが複雑
 4 ホオジロ(頬白)スズメ目ホオジロ科ホオジロ属 全長:17cm
 ホオジロ類のさえずりの基準はやはりホオジロである。識別にはホオジロの声をまずは覚えて比べるのが一番の近道と思われる。ホオジロは非繁殖期の10~11月ごろにもさえずることがあるので是非ともこの秋に注意していただきたい。
 ホオジロのさえずりは、個体によって多岐にわたっているのでそれを聴き比べるだけでも楽しい。個体差による鳴き声の違いについてはまたの機会があれば報告したい。

【写真④】2021年7月 さいたま市
【動画②】2021年7月 さいたま市  71秒

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