*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No30 【幼鳥の声】 ***
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報告: 大井 智弘
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はじめに |
春から初夏は野鳥たちの子育てシーズン。所々から幼鳥たちの声が聞こえてくる。4月末、繁殖の早い鳥の幼鳥の姿が見られだし、その後2度目の繁殖にトライするものもいるようだ。6月から7月にはカラス類や猛禽たちの幼鳥が大きな声を出し始める。今回は身近な野鳥たちの幼鳥の声を紹介したい。 |
1 カワラヒワ(河原鶸)スズメ目アトリ科カワラヒワ属 全長:15cm |
カワラヒワと言えば「ピンク色の太いくちばし、翼の黄色、2つに分かれた尾羽」が特徴で、住宅地はもちろんのこと公園、農耕地、河原など身近な環境で見られる。また、電線などにとまって「キリキリ、ビィーン」とオスがよくさえずる。繁殖後の真夏の換羽の頃は河原などで集団になっている姿が見られる。
繁殖が早いものだと4月中旬に親鳥を追いかける幼鳥が見られた。写真①はカワラヒワの幼鳥で翼の黄色が少し見える。
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【写真①】2021年4月 さいたま市 |
◎鳴き声 |
【録音①】2021年5月 さいたま市 幼鳥の鳴き声 27秒
親鳥を追いかけながら「チョン チョン チョン」と繰り返して鳴く
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2 エナガ(柄長)スズメ目エナガ科エナガ属 全長:14cm |
林の中を小さな集団で移動して行くエナガの姿がよく見られる。特に「ジュル、ジュル」「シーシ-シー」という声を覚えておけば見つけやすい。しかし、動きが速くて私にはピントの合った写真を撮るのは難しい。
エナガはシジュウカラなどのカラ類やメジロ、コゲラなどと「混群」を形成する。エナガも繁殖の時期が早く4月に幼鳥を連れた家族と思われる集団を見かけることができた。 |
【写真②】2018年4月 さいたま市 |
※ 「混群」については、拙稿「野鳥の鳴き声を楽しもうNo15」を参照願いたい。 |
◎鳴き声 |
【録音②】2021年5月 さいたま市 幼鳥の鳴き声 12秒
「チチチ」「ツツツ」という声で鳴き合っている
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3 シジュウカラ(四十雀)スズメ目シジュウカラ科シジュウカラ属 全長:15cm |
この時期一番幼鳥を見る機会が多いのはおそらくシジュウカラであろう。幼鳥は胸からおなかのネクタイのような黒い線がまだ細く、頬や胸に黄色みが見られる。
さいたま市の公園では通行人の多い場所でも営巣していた。
シジュウカラの幼鳥の声はエナガの幼鳥とよく似ている。聞き分けるには両者の観察の機会を増やして聞き慣れるのが一番の近道だと思われる |
【写真③】2017年6月 さいたま市 |
◎鳴き声 |
【録音③】2021年5月 東京都練馬区大泉学園 15秒
「チチチ」「ツツツ」という連続した声で鳴きながら移動していく
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4 カイツブリ(鳰) カイツブリ目カイツブリ科カイツブリ属 全長:26cm |
東京都練馬区の公園の池から「ピィピィピィピィピィ・・・」という鳥の声が聞こえてきた、何事かと目を向けるとカイツブリの親子がいるではないか。さっそくレコーダーのスイッチをオン。散策する人々の声を避けて録音した。
幼鳥の顔には縞模様がありおどけた表情が可愛らしい、体は小さくても上手に泳いでいた。親鳥に何か語りかけていると思われる鳴き声を聞いていただきたい。
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【写真④】2020年9月 さいたま市 |
◎鳴き声 |
【録音④】2021年5月 東京都練馬区石神井 27秒
「ピィピィピィピィピィ・・・」という幼鳥の声
「フィリリ」という成鳥の声がしてもう一度幼鳥の声が聞こえてくる
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【動画】2020年9月 さいたま市 カイツブリの親子 13秒 |
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5 オオタカ(蒼鷹)タカ目タカ科ハイタカ属 全長:オス50cm メス59cm |
幼鳥の鳴き声の締めはオオタカ。幼鳥は体の上面は褐色で下面の胸からおなかにかけて縦斑が見られるのが特徴。幼鳥といってもすでに精悍な顔つきをしている。
【写真⑤】【写真⑥】とも2018年7月さいたま市で撮影したものである。 |
【写真⑤】 |
【写真⑥】 |
◎鳴き声 |
【録音⑤】2018年7月 さいたま市 16秒
餌乞いの時の声で「ピィエー、ピィエー、ピィエー」と数回繰り返す
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