*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No29 【さえずり飛翔】 ***
報告: 大井 智弘

はじめに
 皆さんは「季節感の感じられる鳥のさえずり」と言われてすぐに思いつく鳥は何ですか?まず春が近いと感じられるのは気の早い個体なら2月にはさえずるヒバリではないでしょうか。では夏が近いことを思わせてくれる鳥というと、私は4月下旬から聞こえ始めるセッカの声が気になり出す。偶然にもヒバリもセッカも「さえずり飛翔」を得意とする種である。
 今回は、飛びながらさえずる鳥たちに注目したい。

【写真①】2021年5月 藤岡町 セッカ
 1 さえずり飛翔(ディスプレイ・フライト)とは
 『街・野山・水辺で見かける野鳥図鑑』(日本文芸社)では「さえずり飛翔」を次のように説明している。引用すると「飛びながらさえずること。ヒバリやセッカなど開けた環境で繁殖する種によく見られる」とあった。
 ヒバリ、セッカ以外にどんな鳥がいわゆる「さえずり飛翔」をするのかと調べてみると、『歌う鳥のキモチ』(山と渓谷社)には、シマセンニュウ、オオセッカ、ノビタキ、イソヒヨドリなどとあった。さらにビンズイ、オオルリ、ノジコ、クロツグミ、ゴジュウカラについてはあえて「さえずり飛翔」とは呼ばないが、さえずりながら飛んでアピールすることが観察されているとのことである。
 2 セッカ(雪加)スズメ目セッカ科セッカ属 全長:13cm
 繁殖期に求愛やなわばり宣言をするためにさえずり飛翔を繰り返す代表格であるヒバリにはかなわないが、セッカもかなり長くさえずりながら飛ぶことが多い。
 セッカがさえずり飛翔を繰り返す理由は、一夫多妻なのでヨシ原で広い縄張りを確保することが必要なためのようである。この種の繁殖期は長く秋口に入ってもさえずりを聞くことができる。
【動画】2021年5月 藤岡町 草にとまりながら鳴くセッカ 13秒
◎鳴き声
【録音①】2021年5月 藤岡町 さえずり  42秒
ヨシ原から上昇しながら「ヒィヒィヒィヒィ」、下降しながら「ジャッジャッジャッ」と大きな波形を描きながらさえずり飛翔をする

【録音②】2021年6月 さいたま市 さえずり  44秒
低いところを飛び回りながら「チャチャッ、チャチャッ」だけを繰り返す
 3 オオセッカ(大雪加)スズメ目センニュウ科センニュウ属 全長:13cm
 オオセッカは名前からてっきりセッカ科だと思っていたが、尾羽が長めのセンニュウ類に属する。国内生息数が少ない希少種とのことである。オオセッカを近場で観察するとしたら渡良瀬遊水地のヨシ原でなら出会える可能性はあるが狭い範囲に限定される。
 この種も繁殖期にはセッカと同様にさえずり飛翔を何度も繰り返すが、ほぼ垂直に舞い上がり弧を描くように飛ぶ。セッカのように高いとこまでは舞い上がらないで低空飛行で短距離である。さえずりに慣れてくれば目視することも可能だ。
 写真は、日本野鳥の会「BIRD FAN」オオセッカで見てもらいたい。
◎鳴き声
【録音③】2020年6月 さえずり  30秒
「ジュクジュクジュク・・・」「ジュルルルル・・・」という連続した声で鳴く
※ また、ヨシの先端で「チュクチュク」「ビュルビュル」と早口で鳴く
4 ヒバリ(雲雀)スズメ目ヒバリ科ヒバリ属 全長:17cm
 春うららかな日差しが感じられるようになると、大空にひらひらと舞い上がりながらさえずるヒバリの姿が確認できる。そんな姿を見ればヒバリこそ高く飛びながらさえずる「さえずり飛翔」の最高の歌い手であるといって間違いないであろう。
その飛び方はしばらく上昇し、上空高くでホバリングしていると太陽に隠れてしまうこともしばしばある、そして下降。さえずり飛翔は特に繁殖初期に見られる行動で、次第に地上でさえずるようになるようだ。

【写真②】2021年6月 さいたま市
◎鳴き声
【録音④】2021年4月 さいたま市 さえずり  33秒
「ピーチュクピーチュク、ピリピリピリ」などと繰り返して複雑に鳴く
さえずりと聞きなしについては次のサイト 日本野鳥の会埼玉「さえずり」と「聞きなし」 を参照していただきたい

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