*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No15 【混群の小鳥たち】 ***
報告: 大井 智弘

はじめに
 木漏れ日が差し込む雑木林で耳を澄ましていると、どこからかシジュウカラの仲間たちの声が聞こえてくる。すぐ近くまで寄ってきた鳥たちをよく見るとエナガが5~6羽、シジュウカラ10羽、コゲラ2羽、さらにメジロ、ヤマガラまでも混在している。これがいわゆる「混群(違う種で構成される群れのこと)」だ。 
 忙しく動き回る鳥たちは、私の存在などお構いなしに梢や地面付近で食物を探していた。そして賑やかな声を響かせながら群れをなして移動していく。そんな姿を見ると、気持ちがほっこりするのは私だけだろうか。
 今回は、秋~冬に公園や住宅街の樹林でも混群を形成する小鳥たちの生態と鳴き声を紹介したい。

【写真①】2018年12月 桐生市 ヤマガラ
 1 シジュウカラ(四十雀)スズメ目シジュウカラ科シジュウカラ属 全長:15cm
 シジュウカラは1年を通じて住宅街から山の森でも観察できる小鳥である。暖かい日差しが感じられるようになる1月頃からさえずりだし、民家近くの巣箱、郵便受けなどでも営巣する。秋~冬の間は、他のカラ類(コガラ、ヒガラ、ヤマガラなど)と一緒に行動する。またメジロやエナガなどと混群する姿が見られる。シジュウカラは混群する鳥の中では樹木の低い所、または地面に降りて食物を探すことが多い。
【写真②】2017年12月 さいたま市 柿の実に寄ってきたシジュウカラ
【録音①】2019年10月 さいたま市 コゲラのドラミング、ヤマガラの声も聞こえる。
地鳴き:シジュウカラ「ツピ、ツツピ、ピィーチチ、ジュクジュクジュク」  85秒
2 メジロ(目白)スズメ目メジロ科メジロ属 全長:12cm
 暑い時期は姿を見ないと思っていたら9月下旬になると「チー、チー」という鳴き声が聞こえてきた。そして、シジュウカラとの混群を目にするようになる。ツバキなどの常緑広葉樹を好むのがメジロである。最新の東京都鳥類繁殖分布調査によると、メジロは1990年代ほとんど都心部(23区)で見られなかったのが、2020年の調査では都心に生息地を拡大させてきているとのことで、平地の市街地や公園、民家の庭でも一年中見られることが増えてきた。
【写真②③】2017年12月 さいたま市 シジュウカラに続いてメジロも柿の実に来た
 【録音②】2020年9月 高尾山 地鳴き:「チー、チー キュルキュルキュル」  23秒
3 コゲラ(小啄木鳥)キツツキ目キツツキ科アカゲラ属 全長15cm
 コゲラもまた1980年代以降、東京など都市部でも見られるようになってきた鳥で、「ギィーギィー」という鳴き声が特徴的なスズメ大の日本で一番小さなキツツキである。混群で現れても樹木にピタッとキツツキのように?(笑)張り付くようにとまるので発見しやすい。コゲラは虫ばかり食べているイメージが強いが、春先には桜の花で吸蜜する甘党である。シジュウカラ、メジロと一緒に熟した柿の実を突く姿にはビックリであった。
【写真④⑤】 2017年12月 さいたま市 なんとコゲラもやってきた、これぞ混群!!
 【録音③】2020年10年 さいたま市 地鳴き:「ギィーギィー、キッキッキッキ」  30秒
4 エナガ(柄長)スズメ目エナガ科エナガ属 全長:14cm
 和名の由来は、長い尾羽を柄杓(ひしゃく)の柄に見立て、エナガと名付けられた。群れで木々の梢を素早く動き回る姿が印象的である。冬場はシジュウカラたちと混群するが、混群の先頭を切って現れるのはエナガのような気がする。エナガも都市で見る機会が増えた鳥である。私が鳥見を始めて12年になるが、ここ数年増えているような気がする。いや駆け出しの頃は単に観察力がなかったので発見できなかったのかもしれない(笑)。
【写真⑥】 2017年12月 さいたま市
【写真⑦】 2017年10月 日光市
 【録音④】2019年10月 さいたま市 
地鳴き:「チーチーチー、ジュリジュリジュリ」  15秒 (「ジュリ、ジュリ」は警戒音)
 5 ヤマガラ(山雀)スズメ目シジュウカラ科コガラ属 全長:14cm
 体下面が鮮やかなレンガ色をしたヤマガラは、平地から山地の森林に生息する。シイやカシなどの照葉樹林で多く見られる。特にエゴノキの実が大好物で、頻繁に飛んできては実を他の場所に持って行き固い実を両足で押さえてつついて割って採食する。また、樹木の割れ目に木の実を隠す姿も見られる。冬場は鼻にかかった「ニィーニィー、ビービービー」というが地鳴きがよく聞こえてくるので耳を澄ましていれば見つけやすい。
【写真⑧】2020年2月 東京都練馬区 地鳴きをするヤマガラ
【録音⑤】2020年10月 北本市
地鳴き:「ニィーニィー、ビービービー、チチ」と鼻にかかった声  7秒

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