*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No8 【オオヨシキリ】 ***
報告: 大井 智弘

はじめに
 私が野鳥の鳴き声を録音し始めたきっかけは、2019年の春、認定NPO法人バードリサーチの「森の鳥 聞き取り調査」に参加した事であった。それは、4月~6月の早朝にネットを通じてライブ配信される野鳥の鳴き声を聞きながら参加者がチャットでその情報をやり取りする企画で、瞬時にさえずりと地鳴きが判明されていく。私はただ耳を傾けている参加者レベルだが、素晴らしい学習の機会となった。そして自分でも録音にトライしようとICレコーダーを購入したのであった。写真のように普通のボールペンよりも小さなものだが、初心者の私でも使いやすく十分に楽しめる。
 昨年の6月、最初に録音しようと挑んだ対象はオオヨシキリであった。その理由は、近くで大きな声で鳴いてくれるので、私でもうまく録音できるではと考えたからである。今回は、夏鳥として渡来するオオヨシキリの生態と鳴き声の関係を紹介したい。
※ 「認定NPO法人バードリサーチ」については下記サイトへ。
http://www.bird-research.jp/
※ 写真のICレコーダーについては日本野鳥の会のサイトに詳しい紹介がある。
https://www.birdshop.jp/fs/wildbird/gd3969

1 オオヨシキリ(大葦切)スズメ目ヨシキリ科ヨシキリ属 全長:18cm
オオヨシキリ: 2019年5月 さいたま市(by H.Ohi) 
 夏鳥として北九州以北に渡来し繁殖するオオヨシキリは、海の近くから高原までヨシ原のあるところによく生息する。和名の由来は、ヨシを切り裂き、中にいる昆虫を補食するという意味のようだ。
 大きな口を開けて「ギョギョシ、ギョギョシ、ケレケレ」と真っ赤な口内を見せて大きな声でさえずる。オオヨシキリの鳴き声から「行々子(ギョギョシ)」は、俳句の夏の季語となっていて、小林一茶の句に「行々子口から先に生まれたか」 がある。

2 オオヨシキリは一夫多妻
 今年も4月末から芝川第一調節池ではオオヨシキリがさえずり始めていた。毎年、ここで「ギョギョシ、ギョギョシ、ケレケレ」の声を聞くと夏が近いと感じる。そんなに鳴いて捕食者や托卵をしようとするカッコウに見つかるのではないかと心配になるほどの勢いだがそれには訳がある。
 オスは、渡来すると自分のお好みのソングポストで繰り返しさえずる。さえずりには、なわばりを確保し、繁殖のためにメスの気持ちを引きつけるという意味があるが、一夫多妻であるオオヨシキリは、つがいになるとメスが卵を産み終えるまではメスが浮気しないようにガードをするためしばらくの間は鳴きやむ。そしてメスが卵を産んで温め出すと、次のメスの獲得に乗り出すためにまたさえずり始めるのだ。
 20~30%のオスは2~3羽のメスとつがいになるとの調査結果が図鑑等に載っていたが、ヨシ原で縄張りを得てメスを獲得するために、さえずり続けることは貴重なアピールとなっているようだ。

 ◎ オオヨシキリのさえずり:以下のように大声でにぎやかに鳴く
 「ギョギョシ、ギョギョシ、ケケスケケス」
 「ケケシケケシ、カスカス、ギョシギョシ、ケケスケケス」
 「カシカシ、カシカシ、カシカシ、カカスカカス」 など、多彩にさえずる
 【動画】2020年6月 埼玉県北本市 25 秒
【録音①②】:2020年5月 埼玉県さいたま市 ①と②には若干の違いがある。
       録音①  35秒     録音②  32秒

3 鳴き声録音の楽しみ
 野鳥の鳴き声は、繁殖中に求愛をしたり、縄張りを主張するための複雑で美しい声の「さえずり(song)」と群れの仲間に位置を知らせたり、天敵を見つけて警戒を知らせる「地鳴き(call)」の二つに分けられる。
 ふだん録音する時は、さえずりか地鳴きに該当するように試みるのだが、時々思いがけない鳥たちのコーラスを録音できて面白いことがある。今回、ヨシ原でオオヨシキリのさえずりを狙っていると、ヨシ原を生活の拠点としている鳥たちや近くにいて声を出している鳥の声が一緒に録音された。
 自宅で再生して初めて気づき、ひとりでニヤリとしてしまった。

【録音③】:「鳥たちのコーラス」2019年6月 埼玉県さいたま市  60秒
録音再生での注目点(実況するのは難しいが)
 オオヨシキリの「ギョギョシ ギョギョシ」のさえずりに
 「ヒッヒッヒッ」と鳴きながら上昇するセッカのさえずり、
 キジの「ケン ケーン」というさえずり、
 ほぼ同時に遠くでホトトギスの「キョッキョキョキョキョキョ」の繰り返し、
 そして「チャチャッ チャチャッチ・・・・」と鳴きながら下降するセッカの声!
※ セッカ・ホトトギスの写真は日本野鳥の会埼玉のIT委員会からお借りしました。 

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