*** 探鳥会風景 ***

7/6~7'24 長野県・軽井沢発地~池の平湿原探鳥会
報告:菱沼 一充
野鳥写真:柿沼 真也
 2022年にも探鳥会を実施しましたが、そのときはコロナ禍の最中でした。幸いにも感染者数の谷間にあったため無事開催することができました。今回は少し時期を早めたため、梅雨のど真ん中。毎日、天気予報サイトを見て過ごすことになりましたが、強力な晴れ男、晴れ女がそろったのか、好天に恵まれました。

1日目
 最初は軽井沢の発地を訪れました。蛍の里の駐車場でバスを降り、時計回りに高原野菜や草地、水田がパッチ状にひろがる農耕地を歩きます。ここでは舗装された道からの観察になりますが、この日は高曇りで日差しがあまり強くなく、時折高原の涼やかな風を頬に受けるため、下界の暑さを忘れます。歩き始めるとオオヨシキリ、コヨシキリ、ホオアカの囀りがあちこちから聞こえてきます。オオヨシキリは地元埼玉でもよく見られますが、コヨシキリは、渡良瀬遊水地以外少ないので初めての人もいました。両者の違いをじっくり観察することができ良かったです。コヨシキリは高原のジャズシンガーと言われるように、軽快な旋律を奏でています。道の反対側からはホオジロの囀りが聞こえてきます。ここはホオアカがたくさん囀っていますが、ホオジロに比べてフレーズが短く単調な感じがします。
 前回、葦が茂っていた場所が大豆畑になっていました。地面にはヒバリとセグロセキレイ、杭の上にはノビタキとホオジロがいました。ノビタキはもう囀りをやめてしまったようです。ホオアカはかなり個体数が多くあちこちで見られました。その後、カワセミ、モズ、ペアのキジも観察できました。
 発地にはブルーベリー畑がありますが、ちょうど農家の方がいらして声をかけたところ、取りたてのブルーべリーを差し入れてくれて、皆でいただきました。口の中に甘酸っぱい味が広がりとても美味しかったです(帰りの道の駅で思わずブルーベリーを買ってしまいました。その後、上空にノスリが出現しました。盛んにホバリングを繰り返して、しばらくの間、楽しむことができました。
 コースの後半は水田が広がるエリアです。数羽のアオサギが採餌していました。稲の中にカルガモが首を持ち上げて、こちらを伺っていました。もうすぐバスを降りた蛍の里駐車場付近でコムクドリを探しましたが、残念ながら出会うことができませんでした。昼食は近くの発地市庭で持参したお弁当をいただきました。
 次の観察地は湯の丸高原です。あいにく、雨雲レーダーを確認すると雷雲が近づいており、到着したあとすぐに雨になる予報でした。バスはぐんぐん高度をあげて標高1,733mまで上っていきますが、次第に空模様も悪くなってきました。駐車場について、観察の準備とトイレ。トイレ付近ではキセキレイが観察できました。キャンプ場への道を少し入ったところで、カラマツの梢で耳慣れない囀りが聞こえてきました。確認したところ雄のジョウビタキ。ここ数年、長野県内での繁殖例がかなり増えたようで、目にする機会が多くなりました。再び、歩き始めた時にぽつりと一滴の雨粒。先へ進むのを諦めて、ビジターセンターへ避難します。皆が建物内に入ったところで、土砂降りとなりました。センター内でお話を聞いたり、コーヒーを飲みながらまったりとした時間を過ごしました。バスをセンター入口につけていただき、ほとんど濡れずにすみました。
2日目
 翌日、5時半から宿に隣接した散策路「かえでの小径」の探鳥です。宿舎から坂を下っていくと左手の林のからキビタキ、右手の川筋からミソサザイの囀りが聞こえてきました。キビタキは目をこらしてみても見つかりません。ミソサザイはこれから向かう沢筋から聞こえてくるので見られる可能性大です。かえでの小径に入ってすぐの橋ところで姿を探すと流れの上の梢で鳴いている姿が見られました。比較的近距離のため全員で堪能できました。
 その後も別個体のミソサザイも見つかりました。沢筋を歩いていると上の方から、オオルリの声が聞こえてきました。全員で姿を探しましたが残念ながら姿は見ることが出来ませんでした。その後もキビタキやクロジの囀りが聞こえてきましたが、この時期は葉が生い茂っているため、なかなか見ることは難しいと思いました。
 宿舎のところに戻ってくると、屋根の上から昨日聞いた囀りが聞こえてきます。雄のジョウビタキです。朝日を浴びて高らかに囀る姿は神々しく輝いていました。吊り橋を渡ってインフォメーションセンターへ向かいます。残念ながら展望デッキはしまっていましたが、キセキレイ、シジュウカラ、コゲラの姿を見ることが出来ました。朝食まで時間がありましたので宿舎の裏手に回ってみました。先ほどのジョウビタキが比較的低い梢に止まっているのが見られました。また、シジュウカラ、コガラ、ヒガラ、コゲラの混群が見られました。混群には、シジュウカラやコガラの幼鳥が混じっており、親鳥に餌をねだる姿がかわいらしかったです。
 朝食後、メイン探鳥地である池の平湿原に向かいます。池の平インフォメーションセンターの駐車場でバスを降りて、トイレに寄ってから出発です。トイレはここにしかありませんので注意が必要です。駐車場からは湿原を取り囲む外輪山を反時計回りで一周します。東屋の脇から坂道を上り始めます。足下のツマトリソウ、ゴゼンタチバナ、アヤメなどを観察しながら高度を上げていきます。ビンズイの囀りがきこえてきますが、なかなか良い場所にでてくれません。ようやくカラマツの天辺で鳴くビンズイが見られて一安心です。前回は少し時期が遅かったので、ハクサンシャクナゲはほぼ終わっていましたが、今回はようやく咲き始めたようです。
 雲上の丘(2,110m)で小休止。遠くの北アルプス、八ヶ岳、富士山、近くの湯ノ丸山、東篭ノ登山、黒斑山、四阿山、根子岳の山々が一望できました。少し下ったピグミーの森はうっそうとしており、林床は苔に覆われており名前のとおりおとぎの森のようです。ここはルリビタキの密度が高くあちこちから囀りが聞こえてきます。近くで鳴いている個体を一生懸命探しますが、なかなか姿を見ることが出来ません。何人かは姿を見ることが出来たようですが、私は見つかりませんでした。見晴コマクサ園の近くに来ると、何か騒がしい声がしてきます。2羽のホシガラスが、私たちの周りを飛び回り、道で採餌したり、杭の上で羽繕いしたりして、しばらくの間楽しませてくれました。
 コマクサをしばらく観察してから三方ヶ峰(2,040m)へ向かいました。ここもコマクサ園となっており、コマクサが可憐な花を咲かせていました。三方ヶ峰から、湿原の方への下りです。途中、カモシカがよく見られる場所がありますが、残念ながら今日は見ることが出来ませんでした。湿原には鏡池と呼ばれる小さな池があります。ここでは、モズ(高原モズと呼ばれる灰色がかった個体)とノビタキの番を見ることが出来ました。
 ここまで予想以上の時間がかかったため、そろそろトイレが心配となりました。そこで、湿原を横断して駐車場に向かう班と放開口経由でミヤマモンキチョウを探す班に分かれて行動することとしました。ミヤマモンキチョウ班は忠治の隠岩広場での昼食後、放開口にむかいました。ミヤマモンキチョウは本州中部の高山地帯に生息する高山蝶で、クロマメノキ(ブルーベリーによく似た実をつける灌木)を食草にしています。放開口付近はクロマメノキが多いため、ミヤマモンキチョウが良く観察できるようです。付近に通りかかると、カメラを構えた人たちがいました。私たちも早速、双眼鏡やカメラを取り出して皆さんが見ている方向を見ると、ミヤマモンキチョウが見つかりました。少し遠くて、小さいのでなかなか撮影出来ませんが、どうにか一枚ゲットできました。
 名残惜しいですが、別班が駐車場へ向かっているので先を急ぎました。東歩道を駐車場へ急いで戻ります。前回、この道は蝶が多く見られましたが、時期が少し早いので数が少なく、また、野鳥も少なかったため、思ったよりも早く駐車場に着くことができました。全員がそろったところで、駐車場近くのヒカリゴケを観察してから池の平湿原を後にしました。帰りは雷電くるみの里(道の駅)でお土産を買いましたが、昨日、発地でいただいたブルーベリーが美味しかったのか、私のほかにもブルーベリーをお土産にした人がいたようです。帰路は高速の渋滞もほとんど無く、予定通り大宮へ着くことができました。