鳥獣保護員・エトロフ小林の 『落書き帳』 第9回 籠で鳴(泣)く子 ・ 異郷に死す
ごきげんよう。エトロフです。
前々回、違法飼養に関しては「警察はなかなか動いてくれない」と書きましたが、中には籠で泣いている子のために、一生懸命やってくださる方もいらっしゃいます。と言っても今のところ、こういう方はこれから紹介するS警部しか知らないのですが…
数年前の5月下旬。鳥たちは子育てやら何やらで忙しい季節のこと。県西部のある警察署の生活安全課から「野鳥を飼っているらしい家があるが、どういう鳥なのか判定してほしい」という連絡がありました。
東武東上線のある駅頭で、担当のS警部と待ち合わせ。実はこの時、パトカーに乗れるかな?と、ちょっと期待しましたが、現われたのは普通の乗用車。降りてきたS警部も、刑事ドラマから来る“警部”のイメージから相当かけ離れた、人当たりの良い、腰の低い、おじちゃんでした。
車中で聞いた本事件の経緯。始まりは「近所で飼っている鳥の声がうるさい」という苦情でした。どうせニワトリだろう、と思って、警察官が現場に行ったら、そこにいたのは竹籠の中の小さな鳥。彼は「もしかして飼っちゃいけないヤツでは?」と“ピン”と来たのですが、そもそもどんな鳥なのか、本当に飼ってはいけないのかどうかも、わからない。警察署内に鳥に詳しい人がいない…というわけで、みどり自然課に連絡が行って、エトロフ出動、となったのです。
着いたのは、瀟洒な一戸建て。前回の古くて小さな家とは大違い。家族に、ガーデニングが好きな人がいるのでしょう。華やかな蘭の鉢が、テラスにも玄関にも並んでいました。その玄関に二つの竹籠。一つ目の籠には、落ち着かなげに飛び回る白と黒の小さな鳥。ヒガラでした。もう一つの籠には、止まり木にとまった黒っぽい鳥。近づいてみたら、オオルリ(雄、成鳥)でした。
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