*** 鳥獣保護管理員の落書き帳 ***

鳥獣保護員・エトロフ小林の 『落書き帳』 第11回 干支を喰らう
ごきげんよう。エトロフです。

 年が明けて、早くもひと月。この時季になるともはや、「今年の干支はエ~ト何だったっけ?」ですね、年男・年女でもない限りは…しかし今年の干支・イノシシは、鳥獣保護管理員としては忘れるわけにはいきません!

 昨年末のあるテレビ番組で。「十二支の動物のうち11種は、中国と日本で同じ。1種だけ違うのが“亥”で、日本ではイノシシですが中国では何でしょう?」という問いに対してヒナ段に並んだタレントの皆さんは口々に「中国と言えばアレでしょう」「アレしかない」と答えていました。

やれ「中国と言えばアレだ」とか「90分待ちでシャンシャン見てきたの~♪カワイイ~?」とか言う日本人のなんと多いことか。

でもエトロフは知っています。
「中国の亥年は豚年!」

 なんでエトロフが知っているかというと、日頃、酒を飲む暇を惜しんで古今東西の書物を読み漁っているから・・・ではなくて・・・

 ふた回り前の亥年のこと、その前年まで職場にいた中国の研修生から、職場宛に年賀状が届きました。そこに描かれていたのは、満面笑みを浮かべた豚さん!「なんで豚?」「イノシシじゃないの?」と職場で話題になりました。結局「中国にはイノシシがいないからじゃない?」というところに落ち着いたのですが・・・これが逆なんですね。

 様々な意味を持つ十二の文字で年を表す<十二支>は古代中国で生まれました。そして文字の読めない多くの民衆にもわかるように、それぞれの字に身近な動物があてられたのです。一方、イノシシが家畜化されて豚が作られたのは、もっと昔。中国では新石器時代だとか。つまり十二支が出来たころには、中国ではイノシシよりも豚が身近な動物だったのです。


 さて、十二支が伝わった頃の日本には、まだ豚がいなかったようです(諸説あります)。十二支の動物の中で、目撃者がいない或いは少ないという点で、豚は龍や虎に並ぶ存在だったのですね。十二支を取り入れるにあたって、当時の関係者は困ったことでしょう。「でも、この豚とやら、その辺にいるイノシシに似ているね」「じゃあここは、とりあえずイノシシで手を打ちましょう」ということになって現在に至ったものと思われます。ちなみに日本で豚の飼育が盛んになったのは、大正時代以降だそうです。

 日本人にとって、かつては豚よりも身近だったイノシシですが、ご存知のように最近では、場所によってはさらに身近になりすぎて、トラブルや農業被害が続出しています。

 そもそも、なぜイノシシやシカなどの草食動物が増えすぎたのか? 最も大きな原因は「捕食者がいないから」です。捕食者がいなくなった野生動物は、食べ物がある限り増え続けます。現在の日本では、かつては捕食者であったオオカミが絶滅してしまった一方で、食べ物はほとんど無尽蔵。山野の草や木を食べつくしても、人間がせっせと植林したり農作業したりで、食べ物を供給してくれますから。彼らにとっては食べ放題、増え放題。

 埼玉県でも増加傾向が続くイノシシとニホンジカについて「第2次埼玉県第二種特殊鳥獣管理計画」が策定され、主に県西部の市町村において進められています。ところで「鳥獣管理計画」とは何でしょうか? ひとことで言えば、増えすぎた鳥獣の個体数や生息域を減らすことです。つまり捕獲、というか駆除です。

 もはや「動物の命を奪うのはよくない」「可哀そう」などと言っていられない状況に来ているのですが、それでもやはり、動物を殺すということには、抵抗があります。「増えすぎたので、殺して減らしました。はい、おしまい」という態度は許されるべきではありません。結果的にそうなってしまっても、せめて罪滅ぼしをしなくては、という意識を持ってほしい。人間と言えども、地球の生態系の一部。捕食者として、草食動物の命を、感謝して頂くべきではないでしょうか。

鳥獣保護員エトロフの今年の目標
<イノシシを食べて、食レポを皆様にお届けする!>

 ジビエって興味があるけど、ちょっとね、という方、多いですね。そういう方のハードルを下げたいと思っています。シカでもいいんですけど、ここは今年の干支のイノシシで。実はエトロフも食べたことがありません。内心「ちょっと臭いのでは?」とビビっていたりしますが、あるハンター曰く「鍋にすると濃厚で美味しいよ~」 その“濃厚”ってとこが怪しいんだよなぁ… いや,ガタガタ言ってないで、食べに行こう!  それでは食レポをお楽しみに!


各環境管理事務所の連絡先は、以下をご参照ください。
http://wbsj-saitama.org/kankyokanri_office.html
戻る