*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No16 【ジョウビタキ】 ***
報告: 大井 智弘

はじめに
 10月下旬になるとあの鳴き声が聞こえてこないかと思い始める。そう「ヒッ、ヒッ、ヒッ」「カッ、カッ」という声だ。朝、冷たい風が吹いていても窓を開けて探してしまう。渡来すぐの頃は、大きな農家の屋根や民家のTVアンテナで姿がよく見られる。また、人を恐れずに近い所まで来てピョコンとお辞儀をしてくれるような仕草も印象的だ。今回は冬の訪れを告げるかのように渡ってくるジョウビタキの鳴き声と生態について紹介したい。
【写真①】2018年11月さいたま市
 1 ジョウビタキ(尉鶲・常鶲)スズメ目ヒタキ科ジョウビタキ属 全長:14~15cm
 ジョウビタキはシベリヤやチベット、中国東北部方面から渡ってくる冬鳥で、住宅街の他、都市公園、農耕地などの比較的開けた明るい環境でよく観察される。越冬期には単独で生息するのでなわばり意識が強い。近年、本州山間部で繁殖が確認されている。
 雄は胸があざやかな橙色で、顔は黒く、頭部は銀色~灰白色。雌は頭部から体上下面は褐色で全体的に淡い色合いである。雌雄とも翼には白斑があり「紋付」と呼ばれることもある。
【写真②】♂ 2019年2月 館林市 【写真③】♀ 2017年3月 北本市
2 ジョウビタキの鳴き声
  冬鳥として渡来するので私たちが聞くことができる鳴き声はいわゆる「地鳴き」である。渡来してすぐの時期の鳴き声は「なわばり宣言」の意味合いが強い。同種で追いかけっこしながらもよく鳴き声を出しているので、威嚇や警戒の意味もあると思われる。
 国内でさえずりを聞く機会は少ないが、『山渓ハンディ図鑑 日本の野鳥』には、繁殖地で聞けるさえずりは「ヒチチューチョイチュウ」と複雑で美しい声だと書かれている。また3月末、北方へ渡る頃、弱いぐぜり声でさえずりに似た声を出すそうだ。近年、八ヶ岳山麓など本州山間部での繁殖例が増えているのでさえずりを聞く機会が増えるかもしれない。
 【地鳴き①】2020年11月 さいたま市 「ヒッ、ヒッ、ヒッ」「カッ、カッ」  21秒
 この鳴き声が火打ち石の音のように聞こえたことから「火焚き」「火叩き」と名付けられ、「ヒタキ」に転じたと言われている。
【動画①】2020年11月 さいたま市 ジョウビタキ(雌)の地鳴き  17秒
 【地鳴き②】2020年10月 さいたま市 「ヒッ、カッカッカッ」「ククク」  16秒
 以前、この「カッカッ」「ククク」という音は尾羽を鳴らしていのるかと思っていた(笑)
 【地鳴き③】2020年10月 さいたま市 「チッ チッ」「ケッ」「カッ」  31秒
 間隔を開けて「チッ」「ケッ」「カッ」などと鳴く
3 意外と気が強いジョウビタキ
 11月中頃までに、我が家(さいたま市南区)の近くでは雄1羽、雌2羽が越冬しそうな雰囲気がある。雄は大きな農家の付近を陣取っている。雌は公園近くの民家、もう1羽の雌はやはり農家だ。農家の近くには畑もあり絶好のなわばりのようだ。犬も飼われているのでもしかしたらドッグフードをいただいているかもしれない。
 ジョウビタキ同士の争いはよく見られるが、11月中旬、雄のテリトリー内にモズの雄が入って来ていた。畑の柵で両者がにらめっこしたかと思うと、ジョウビタキがモズを追い出した。他のテリトリーでは、雌がシジュウカラを追っていた。私の知るところでは、以前、雌がルリビタキ、ニシオジロビタキを追い払うところを見たことがある。この冬はジョウビタキのなわばり内での陣取り合戦にも注目したいと思っている。
【動画②】2020年11月 さいたま市  71秒
 雌が柵にいたので「鳴いてくれ」と願ったがダメだった。

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