*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No13 【カワセミ】 ***
報告: 大井 智弘

はじめに
 9月は旅鳥たちが動き始め、夏鳥と冬鳥が入れ替わる時期である。しかし、シギ・チドリを見るためには干潟や海岸へ、鷹の渡りもちょっと遠出が必要だ。
 残暑の中、近所を歩いていると「(身近な鳥たちには悪いが)いないな~」という言葉が出てしまう。そんな時、チラ見であってもその姿が見られるとラッキーと思えるのが「カワセミ」。今回は、光沢のあるコバルトブルーの羽毛が美しいカワセミの生態と鳴き声を紹介したい。

【写真①】 2017年10月 北本市
 1 カワセミ(翡翠)ブッポウソウ目カワセミ科カワセミ属 全長:17cm
 「チー、キッ、キッ、キッ  1秒」と自転車のブレーキがきしむような声を発して姿を現すカワセミ。川の岸から岸へ、または池などでホバリングしながら小魚を見つけて水中に飛び込む。その姿はカメラ好きの方々には堪らないようで、時にはバズーカ砲のようなカメラを持った人を何人も従えている。
 日本の高度経済成長期に河川の汚染がすすみ都心部から姿を消したカワセミは、1980年代以降、再び都心部に姿を現すようになった。今では少し薄汚れた河川でも観察できるがカワセミを「清流の宝石」と呼ぶのは少し持ちあげすぎで、もともと営巣できる環境と小魚さえいれば、汚れていてもたくましく適応して生きていたのであろう。
 雌雄はほぼ同色だが、オスの下嘴は黒く(写真②)、メスの下嘴は紅を差したように赤い(写真③)。
【写真② オス】2019年9月 さいたま市 【写真③ メス】2020年2月 東京都練馬区
2 カワセミの鳴き声
 カワセミを見つける時、まずは「チー」と鋭い鳴き声を覚えてしまえば存在に気づくことができる。あとは、急に鳴きながら現れるので見落とさないことが肝心で、慣れると意外に見つけやすいのがカワセミだ。
 いざカワセミの鳴き声を録音しようとすると意外にむずかしい。水面の低いところを鳴きながら通過していってしまうし、お好みの水辺の杭や横に飛び出した枝先、石の上にいる時に鳴くことは少ないからだ。
 次の動画はカワセミが場所を少しかえながら鳴き声を聞かせてくれたので見てもらいたい。
【動画】2020年9月 さいたま市  1分28秒
3 カワセミの求愛給餌
 鳥たちは繁殖期になると、おもにオスが「さえずり」でメスの気持ちを引きつけたり、なわばりを確保しようとする。図鑑等では、カワセミの場合はっきりとした「さえずり」という定義はなく、「鳴き声」と書かれている。おそらく我々にはわからない声でラブコールをしているであろうが、朗々と歌うわけではないので「さえずり」とは呼ばれない。
【録音】2020年4月 さいたま市  65秒
鳴き声:連続して「キッ、キッ、キッ」「ピッ、ピッ、ピッ、ピピピピピ、ツィー」と鳴く
  しかし、カワセミのオスは、さえずりの代わりに魚を捕まえてメスにプレゼントをする「求愛給餌」を行う。そして、メスは気に入ったオスから魚を受け取って、交尾へと進むことになる。簡単に「求愛給餌」というが、オスはメスが食べやすいように魚を止まり木に叩きつけて動きを止め、さらにはメスが魚を飲みこむ時にうろこが引っかからないように魚の頭をメスに向けて渡す気配りまでするとのことである。やるなぁ! すごい!!(笑)
 【参照資料】 『トリノトリビア』川上和人・マツダユカ(著) 西東社
【写真④⑤】2020年5月 さいたま市 「求愛給餌から交尾へ」

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