*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No11 【ホオアカ】 ***
報告: 大井 智弘

はじめに
 2020年の夏は新型コロナウィルスの感染者数が再び増加し、加えて猛暑日が連日続いたため今ひとつ外出を控えることが多かった。ちょっと涼しいところへ逃げ出したいが自粛、自粛で我慢を強いられるムードが漂った夏であった。
 そこで、今回は夏のさわやかな高原の雰囲気を少しでもと思い、高原でさえずるホオアカの生態と鳴き声をホオジロと交えながら紹介したい。
               

【写真①】 2019年7月長野県諏訪市
 1 ホオアカ(頬赤)スズメ目ホオジロ科ホオジロ属 全長:16cm
  夏の高原を代表する「ほおの赤い(レンガ色、栗色)鳥」ホオアカは、山地の草原、高原で繁殖し、冬季は温暖な地方の平地のヨシ原、農耕地などで越冬する。繁殖期のオスは高い場所や美しい山野草の花にとまって盛んにさえずることが多い。
 下の写真②はニッコウキスゲの群生の中でお好みのソングポストにとまっているホオアカである。写真をクリックしてもらうと拡大されてよくわかるのだが、ホオアカの胸にはT字型の黒い縦斑と茶色のネックレスのような線が見られるので、ホオジロとの識別は容易である。
【写真②③】 2019年7月 長野県諏訪市 「ホオアカ」
2 ホオアカのさえずり
 さえずり:「チョッピッ チュルリル」と繰り返して鳴く
 【録音①】 2019年7月 長野県諏訪市   19秒
 地鳴き :「チッ チッ」と鳴く
 
 『日本の野鳥 さえずり・地鳴き図鑑』植田睦之【監修】(メイツ出版)によると、ホオアカのさえずりについて「さえずりが似ている鳥はホオジロ。(ホオアカは)やや濁って詰まった感じで鳴く。聴き分けには慣れが必要。」と書かれている。
 さえずりの違いは、聴き比べてみるのが一番わかりやすく納得していただけると思うので、試聴していただきたい。
【動画①】 2019年7月 長野県諏訪市 「さえずるホオアカ」 24秒
【録音②】 2020年8月 埼玉県さいたま市 「ホオジロのさえずり」   19秒

【写真④ 】 2017年5月 埼玉県さいたま市
3 ホオアカ・ホオジロの子育て
 以前、せっせと幼鳥に餌を運ぶいわゆる「イクメン」モズやシジュウカラのオスは、子育てを手伝わないオスと違って一年に二回の繁殖ができるという論文を読んだことがある。「イクメン」オスによる子育てへの協力、貢献は、メスの負担を軽減してメスが次の繁殖をしやすくなるため、結果的にオスがより多くの子孫を残せることになるのであろうか。
 昨年、夏の探鳥旅でもホオアカの幼鳥を度々確認できたが、しばらく観察していると近くに親鳥と思われるオスがいた。野鳥界も人間社会も「イクメン」オスの役割は重要なようである。
【写真⑤⑥】 2019年7月 長野県茅野市 ⑤ホオアカの幼鳥 ⑥親子
【動画②】 2020年8月 埼玉県さいたま市 ホオジロの親子 71秒
 幼鳥が、親父のさえずりを聞いて鳴き方を学習しているように見えるのは私だけでしょうか?(笑)

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